【弁護士監修】相談事例①:長男には絶対に遺産を相続させたくない!

この記事の監修者:弁護士 内藤政信

【所属事務所】優和綜合法律事務所(第一東京弁護士会)

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相談者:一郎さんの相談

<登場人物>

相談者(仮名):一郎(72)

妻(仮名):貞子(69)

長男(仮名):卓也(48)

次男(仮名):貞夫(43)

 

私も70代を迎え、身体が動かなくなってきました。年のせいで物覚えも悪くなり、これ以上頭が鈍くなる前に、遺言書を残そうと思い立ちました。

現在、私の財産は、自宅の不動産と、自動車、それから貯金が2,500万円ほどあります。

妻には、自宅と自動車、それから貯金の500万を残し、次男の貞夫には、残りの2,000万円を相続させたいです。

長男の卓也とは、かなり仲が悪く私の財産を一切相続させたくありません

というのも、卓也は人間として最低なことをしたからです。悪い仲間とつるんで、年寄りを騙し、詐欺まがいの商売を行っていました。

詐欺容疑で2回ほど警察にお世話になったこともあります。

一度捕まったときに、「もう二度と悪いことはしない。まっとうな人間になる」と言っていたのでにもかかわらず、同じ詐欺でまた捕まりました。

しかも、その元手として、私の貯金に手を付けたのです。

人を騙してお金を儲けるなんて、一度でも許せないのに、繰り返し行っており、全然反省が見られないと思いました。そのため、相続させたくないのです。

遺言書では、相続の権利をもつ人を外すことが出来ると聞きました。

そのため、卓也から相続の権利を取りたいのですが可能なのでしょうか。また、相続の権利を外すのは、遺言書じゃないと出来ないことなのでしょうか。

どういう仕組みになっているのかわからないので教えていただけると幸いです。

 

弁護士の見解は…?

結論から言うと、特定の推定相続人に遺産を相続させなくすることは可能です。

今回の一郎さんのケースでは、長男の卓也さんを相続人から除外できる可能性は高いと思われます。

推定相続人とは、現在相続が発生した場合、遺産を相続するはずの人のことを言います。

一郎さんの場合、推定相続人は、妻の貞子さん、長男の卓也さん、次男の貞夫さんがこれに当たります。

 

遺留分のある推定相続人の相続権をはく奪する手続きを、相続人の廃除と言います。

相続人の廃除の対象となる相続人は、兄弟姉妹以外の相続人で、廃除が認められた場合、遺産の最低限度の取り分である、遺留分の権利も失います。

このように、一切の相続権をはく奪するということは、とても重い意味を持ちます。

そのため、「単にその相続人が気に入らないから」という理由では、認められる可能性はありません

当該推定相続人が次のようなものを行っていることが、条件となります。

 

  • 相続人を虐待した
  • 相続人に対し、重大な侮辱行為をした
  • 著しい非行をした

 

虐待や侮辱行為の他に、非行が挙げられます。著しい非行とは、その行為によって、主観的にだけでなく、社会的にも家族関係が破綻状態になり、その後の修復が困難であることを指します。

卓也さんの場合、2度同じ詐欺罪で捕まっており、しかも一郎さんの預金を無断で持ち出しておりますので、相続人廃除の要件に該当する可能性が高いと思われます。

相続人の廃除の手続きは、以下の二通りの方法があります。

 

  1. 被相続人になる人が、家庭裁判所へ相続人廃除の申立てを行う
  2. 遺言書で、当該推定相続人を相続人廃除に指定する

 

1.被相続人になる人が、家庭裁判所へ相続人廃除の申立てを行う

相続人廃除は、被相続人の生前にも手続きを行うことが出来ます。ご自身がお住まいの地域を管轄する家庭裁判所で審判を行うことによって成立します。

審判で廃除が確定した場合、審判書謄本と確定証明書を交付してもらうことが出来ます。これらの証明書を持って、被相続人の戸籍がある市区町村に、確定から10日以内に廃除の届け出を行う必要があります。この手続きによって、廃除の情報が、戸籍に記載されます。

2.遺言書で、当該推定相続人を相続人廃除に指定する

遺言書で相続人廃除を行った場合、遺言書が有効になるのは、すでに被相続人の死後ですので、代わりに手続きしてくれる人が必要です。

代わりに遺言内容を執行してくれる人のことを遺言執行者と言います。

相続人廃除を行う場合、遺言執行者(※)をご自身で指定しておいた方が良いでしょう。

遺言執行者に指定された人は、被相続人に代わり、家庭裁判所へ相続人の廃除の申立てを行うことになります。

相続人廃除の審判では、廃除したい理由が重要となりますので、遺言書には、その理由をきちんと記載しておいた方が良いです。

審判が確定した場合には、①と同じよう、遺言執行者が確定後10日以内に被相続人の戸籍のある市区町村へ廃除の届け出を行う必要があり、手続きを行うことによって、その情報が戸籍に記載されます。

※遺言執行者を指定していない場合は、被相続人死後、遺言執行者の選任を家庭裁判所へ申請しないといけません。

 

相続人廃除は、廃除に足る理由を裁判所に正確に伝えることが大切です。廃除理由によっては棄却されてしまう可能性もありますのでご不安の方は弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

 

この記事を監修した弁護士は…

【事務所】優和綜合法律事務所
【弁護士】内藤 政信
【所属】第一東京弁護士会所属
【一言】東京の錦糸町で35年以上弁護士として活動しています。ご依頼者様の立場にそって、より良い解決方法を目指し対応しております。お気軽にご相談ください。

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