【弁護士監修】相談事例②:自分で遺言書を書いた場合の保管場所を教えてほしい

この記事の監修者:弁護士 正木絢生

【所属事務所】弁護士法人ユア・エース

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相談者:国男さんの相談

<登場人物>

相談者(仮名):国男(62)

相談させてください。去年、心不全で大きな手術を経験し、今も長い間入院しています。
医者から「心臓の病気とは、一生付き合っていかなければならない」と言われたので、もしもの時のため妻や大学生の子どものために遺言書を作成しました。
ただ、自宅で遺言書を保管すると見つけられない可能性があると思い、遺言書を保管する制度がないかなと探していたところ、「法務局の自筆証書遺言保管制度」というのを見つけました。

早速、遺言書を保管する手続きを行いたいと思いますが、何点か不安な部分があります。

1つ目は、保管場所のこと。法務局に遺言書の保管所があるらしいのですが、手続きを行う法務局はどこでも良いのでしょうか?
入院しているため、法務局に行くには外出許可が必要です。
また、自宅と病院は県が違うので、病院のある県で遺言書の保管手続きを行っていいものなのか疑問です。

2つ目は、内容のチェックについてです。ホームページには、遺言書の形式について法務局でチェックを行ってくれると記載がありました。
チェックとは、遺言書の記載内容に法的問題がないかの軽いチェックと言うことでしょうか。

上記2点、ご教示いただければ幸いです。

弁護士の見解は…?

2点の疑問について、結論から申し上げますと、以下の回答になります。

 

  • 遺言書を保管する法務局は決められているので、どこでも良いわけではない。
  • 法務局は,遺言書の形式面のチェックはしてくれる。
  • 法務局では、遺言書の内容面のチェックまでは行わない。

 

①遺言書を保管する法務局は決められているので、どこでも良いわけではない。

自分で書いた遺言書(自筆証書遺言と言います)を保管してもらう法務局は、次のいずれかの条件にあてはまった場所にないといけません。

  1. 遺言者(遺言を残す人)の住民票がある地域を管轄している
  2. 遺言者の本籍地がある地域を管轄している
  3. 遺言者が所有する不動産がある地域を管轄している

これらの条件にあてはまらない法務局には遺言書を保管することはできません。
今回の相談者、国男さんのケースでは、病院のある地域にご自身の本籍がある、もしくは不動産を所有しているケースなら、病院の近くにある法務局で自筆証書遺言の保管を行えるでしょう。
病院のある地域に、本籍地も不動産も所有していない場合には、遺言書を保管することはできません。
なお、自筆証書遺言の保管は、遺言者本人が法務局に訪れ手続きを行う必要があります。そのため、国男さんが手続きを行えるのは、一時帰宅等が病院から許された時や、退院時になると思います。

②法務局では,遺言書が形式的に問題ないかチェックされる。

自筆証書遺言は、民法上、形式が厳格に定められています。法律が定める形式に従って書かないと、内容にかかわらず無効になってしまいます。

法務局に遺言書の保管申請する際に、遺言書が民法の定める自筆証書遺言の形式に適合しているかについて、遺言書保管官による外形的なチェックが受けられます。

そのため、法務局に保管される遺言書は、民法の求める形式に従っているという意味では有効な遺言書として保管されます。

③法務局では、遺言書の内容面のチェックまでは行わない。

法務局は、遺言が法的に問題がないものであるかどうかのチェックまでは行いません
そのため、保管された遺言書に形式的な問題がなくても、内容的に無効である可能性は十分考えられます。

また、法律上有効であっても、遺言書が作成者の考えた通りの効力を有さない場合もあります。
例えば、多くの財産を所有している人が、財産の一部についてしか遺言書に記載していなかった場合、遺言書の細かい表現によって、遺言書の効力が大きく変わることがあります。

内容面についても有効な遺言書を作成するもっともポピュラーな手段として、公正証書遺言が挙げられます。
公正証書遺言は、公証役場で法知識が豊富な公証人の手によって作成されるので、内容面についても問題のない遺言書を作成したいのならば、公正証書遺言を作成することをおすすめします。

→遺言書についてきになる方は、こちらの記事もご覧ください。
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この記事を監修した弁護士は…


【事務所】弁護士法人ユア・エース
【弁護士】正木 絢生
【所 属】第二東京弁護士会所属
【一 言】相続の問題はさまざま。当事務所では、遺言書や遺産分割協議を中心に相談をうけたまわっております。気になった方は、一度当事務所にご相談ください。