遺言書自分で書ける!~自分で書くなら、お金もあまりかからない!?~
呼んでくれてありがとうございます!自分で書く遺言書とは、おそらく『自筆証書遺言』と呼ばれるものです。まずは、遺言書の種類をざっくり確認しましょう。
遺言書の種類は3つ!~自分で書くのは、その中のどれ…?~
遺言書には次のような作成方法があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
それぞれ作成方法にどのような違いがあるのか確認していきましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、すべて手書きで作成する遺言書です。紙とペンと印鑑があれば、自力で作成することが出来ます。
遺言書として効力を発揮するには、自署と印鑑、作成した日付の記載が必要なので、作成する場合には忘れないようにしましょう。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場というところに行き、公証人という法律に詳しい方と相談しながら作成する方法です。
公証人がいないと作成が出来ないので、自分の力だけでは出来ません。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が生きているあいだ、秘密にしたい遺言を残したいときに利用する方法です。
遺言書自体は、本人が自由に書くことが出来ますし、パソコンで書いても手書きで書いても構いません。
しかし、「封印」という作業は、公証人役場におもむき、手続きをする必要があります。
3つの遺言書の作成方法を簡単に説明しました。
自分の力だけで完成できる遺言書の方法は、自筆証書遺言と言って良いかもしれませんね。なお、秘密証書遺言を利用する方は少なく、多くの方が自筆証書遺言や公正証書遺言を選択しています。
3つの遺言書をもっとくわしく知りたい!と思った方は、下の記事をチェック!
自筆証書遺言はあまりお金がかからない!
自筆証書遺言を作成にするにあたって、用意するものは、紙とペン、印鑑です。
また、作成方法についても、書式の指定はありません。つまり、自分が好きなように書くことが出来るのです。また、シャチハタでも遺言書の有効性が認められます。
作成におけるコストや手軽さは、自筆証書遺言の魅力と言ってよいでしょう。
これに対して、公正証書遺言や秘密証書遺言は、公証役場での手続きが必要です。遺言書は、代理人が認められないので、自分で公証役場に赴く必要があります。
また、公正証書や秘密証書遺言の封印を行う場合、手続き費用として、手数料が発生します。
自筆証書遺言は、公証役場を通さないので、手数料が発生しないため、コストを安く抑えられるのです。
今、自筆証書遺言が推されているのはなぜ?~理由は相続法改正にアリ!~
従来あった自筆証書遺言の問題点って…?
自筆証書遺言は費用のかからない遺言書で、広く利用されていました。しかしながら、問題点もありました。それは…
- 紛失・改ざんのリスク
- 手書きによるミス
せっかく遺言書を残しても、相続人に見つけてもらえなかったり、手書きによるミスがあったり、と無効になってしまうことがありました。
また、遺言書の内容を一部の相続人が有利な条件になるようにと、改ざんされてしまうケースも少なくなかったのです。
そのため、「遺言通りに執行してほしい」と考えた人は、多少費用が高くとも、公正証書遺言を選択するケースが多かったのです。
しかし、2019年1月から始まった大改正によって、自筆証書遺言を作成するリスクが軽減され、見直されることになったのです。
相続法の大改正でどこが変わったの?
2019年に1月から始まった相続法の改正は、実に40年振りの大改正でした。
そのなかで自筆証書遺言に関する改正は、下記の2つになります。
- 自筆証書遺言の緩和
- 自筆証書遺言の法務局保管制
具体的にどのような点が変わったのでしょうか。確認していきましょう。
自筆証書遺言の緩和(2019年1月13日)
自筆証書遺言は、すべて手書きで作成するものだとお伝えしました。
しかし、現在(2021年)、財産目録についてはパソコンで作成することが出来るようになっています。
遺言書における財産目録とは、自分の持っている金銭・有価証券・不動産などの資産の一覧表のことです。
現金や預貯金等は、金額や口座情報を記載すれば、事足ります。
しかし、不動産や有価証券などは、記載事項も多く、漏れや抜け落ちなどのミスが発生しがちでした。
自筆証書遺言の記載方法の緩和によって、財産目録をパソコンで作成できるようになったことで、作成にかかる時間や、ミスを減らすことが出来るようになりました。
現在(2021年)の法律では、財産目録以外は、依然として手書きのままです。
今後は、財産目録以外も電子化の流れによってパソコンで作成できるようになるかもしれませんね。
自筆証書遺言の法務局保管(2020年7月10日)
民法改正前の自筆証書遺言の問題点として、遺言書を自分で保管しないといけないことが
ありました。
被相続人が遺言書を書いたことを知らない場合、遺産分割協議を終えてから、遺言書が発見され、遺産分割の話し合いがやり直しなんてことも起こっていました。
また、一人の相続人が、遺言書を見つけて、隠したり、内容を改ざんしたりした例も少なくありませんでした。
しかし、2020年7月10日からは、ご自身のお住まいの地域を管轄する法務局に申請をおこなえば、自筆証書遺言を保管できるようになりました。
保管にかかる費用…。気になりますよね?以下に表でまとめてみましたので、ご確認ください。
申請・請求の種類 | 申請者 | 手数料 |
---|---|---|
遺言書の保管 | 遺言者 | 一件につき3,900円 |
遺言書の閲覧の請求(モニター) | 遺言者・関係相続人等 | 一回につき1,400円 |
遺言書の閲覧の請求(原本) | 遺言者・関係相続人等 | 一回につき1,700円 |
遺言書情報証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき1,400円 |
遺言書保管事実証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき800円 |
申請書・撤回書等の閲覧の請求 | 遺言者・関係相続人等 | ひとつの申請にする申請書等、またはひとつの撤回関する撤回書等につき、1,700円 |
※関係相続人等については遺言者死亡後になります。
法務局は完成した遺言書を預かってくれるシステムなので、公正証書遺言のシステムと一概に比べることは出来ませんが、単純に金額でいえば、公正証書遺言にくらべ手数料は割安です。
自分で作成した遺言書を保管してくれる制度はありがたいものですよね。
また費用面以外にも、遺言書を法務局に管理してくれるメリットがあります。
それは…検認作業が必要ないことです!
自筆証書遺言が被相続人の自宅で見つかった場合、検認の手続きすることがルールで決まっています。
というのも、自筆証書遺言は、公証人のような法の知識をもったかたが作成しているわけではないので、見つかった遺言書が有効か無効かを判断する必要があります。
判断をあおぐため、家庭裁判所に「検認」の申請をしなければならないのです。
検認の申請から、手続きが完了するまでは、およそ1か月から1か月半とされています。
しかし、遺言者が法務局に自筆証書遺言を保管しておけば、検認の必要がありません。
つまり、残された家族などの相続人の手間が減るというわけですね。
家族や近親者が亡くなると、葬儀や四十九日などの法要、遺品整理とかなりバタバタします。そんな中、検認の手続きがあると余計忙しくなってしまいますよね。
自分のためにも、残された家族のためにも、自分で遺言書を作成したときには法務局の保管制度の利用をおすすめします。
自筆証書遺言のメリットは大きい!しかし反面デメリットも…ある…
自筆証書遺言のメリットは大きい!反面デメリットもある
自筆証書遺言のデメリット①日付や押印が無いと無効になる可能性がある
自筆証書遺言は手書きで作成するため、内容にばかり注意が行ってしまい、日付や押印などを見逃してしまいがちです。
具体的にいうと、以下のようなものを書き忘れることがあります。
- 遺言書の作成年月日
- 自分の署名
- 押印
上述した作業はとても簡単なので、「後でやろう」と後回しにし、そのまま忘れてしまうことがあります。
しかし、日付や署名、押印が無いと、内容にミスが無くても、遺言書の要件から外れてしまいます。結果、効力のない遺言書になってしまうので注意が必要です。
自筆証書遺言のデメリット②遺言書の内容があいまいになる
自分で書く遺言書(自筆証書遺言)では、自分で内容を書くため、財産の指定などがあいまいになってしまうことがあります。
遺言書の内容があいまいですと、法的効力が認められなくなる可能性が高くなります。
また、内容がはっきりしていないために、相続人のあいだでトラブルになり、裁判で効力の可否について争うこともあるのです。
デメリットを回避する方法はないの?
デメリットの①に関しては、「徹底して確認をすること」に尽きます。年を重ねると、記憶力が落ちてしまい、失念することが多くなると思います。
「日記帳や手帳に署名や押印をした」と言うことを記載しておくと良いかもしれません。
デメリットの②については、遺言書の持つ法的効力を確認することです。
遺言書の内容は、法定遺言事項と付言事項に分けることが出来ます。
「法定?」「付言?」と疑問を覚えた方もいると思いますので、2つの違いを解説させていただきます。
法定遺言事項
遺言の内容が法的に効力を持つもののことです。おもなものをまとめてみましたので、ご確認ください。
- 相続人の廃除
- 遺産の指定
- 遺産分割方法の指定
- 遺産分割の禁止
- 相続人以外への財産の遺贈
- 子の認知
- 遺言執行者の指定または指定の委託
- 遺言者の死後、先祖を供養してくれる人の指定
- 生命保険受取人の指定や変更
付言事項
遺言書の付言事項とは、法的効力を持たない内容のことを指します。
具体的に言うと、遺言書作成の理由や家族に向けた自分の気持ちなどが付言事項に当たります。
遺言書の内容は、家族へ残せる最後のメッセージになるので、何を伝えたいか考えて書くと良いでしょう。
デメリットの②を回避するには、遺言が遺言書モデル事例に即しているか、不動産など記載事項の多い財産に関しては、記入ミスがないか確認をすることが大切です。
まとめ
今回は、自筆証書遺言について、深く掘り下げていきました。いかがでしょうか。ご自身で、遺言書を作成できそうでしょうか?
「ミスが不安」「専門家に書き方をサポートしてほしい」と言う方もいるかもしれません。そういったときには、自筆証書遺言のサポートをしてくれる専門家に頼ることも手段のうちです。
事務所ごとにサービスの内容が異なりますので、費用については問い合わせされると良いでしょう。
気になった方は、問い合わせフォームから、ご連絡いただけると幸いです。
この記事を監修した弁護士は…
【事務所】優和綜合法律事務所
【弁護士】内藤 政信
【所属】第一東京弁護士会所属
【一言】東京の錦糸町で35年以上弁護士として活動しています。ご依頼者様の立場にそって、より良い解決方法を目指し対応しております。お気軽にご相談ください。
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