【司法書士監修】相続放棄とは?

この記事の監修者:司法書士 畠山勇輔

【所属事務所】司法書士はたけやま法務事務所(埼玉司法書士会)

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相続放棄とは、相続人が被相続人の遺産を相続したくないときに利用できる方法です。

よく利用するシチュエーションとして、「被相続人の相続遺産がマイナス超過しているとき(例えば、借金が多い場合)」が挙げられます。

今回は、相続放棄について詳しく解説していきたいと思います。

この記事でわかること

・相続放棄の期限
・相続放棄の手続きについて
・相続放棄の注意点について
・相続放棄の効果について

相続放棄の期限について

相続放棄は、いつまでもできるわけでありません。原則として、相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申立てを行わなければなりません。

「相続の開始を知った日」というと、なんとなくあいまいに思えますが、相続は、被相続人の死亡によって開始されるので、基本的に被相続人の死亡日と考えても良いと思います。

例えば、同居の父が死亡した場合の子供、配偶者の相続の開始を知った日は、その父が死亡した日ということになるのが自然でしょう。

しかし、どんな場合でも「被相続人の死亡日」というわけではありません。

例えば、30年前に家を出たきり音信不通の父が、遠く離れた地方で亡くなったという場合、置き去りにされた子や配偶者は父の死亡そのものを知ることができません。

このような場合、「相続の開始を知った日」は、原則として、父の死亡日でなく、父が死亡したことを知り、かつ、これによって自分が相続人となったことを知った日となります。

相続放棄を申し立てる裁判所について

相続放棄は、ご自身や相続人同士で完結する手続きではなく、必ず家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。

また、家庭裁判所ならば、どこでもいいわけでなく、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に限られます。

平たく言えば、被相続人の住民票があったところが管轄の家庭裁判所です。なお、管轄の家庭裁判所は、裁判所のホームページより確認することができます。

相続放棄手続きについて

相続放棄手続きについて簡単にご説明します。

  • 申立権者
  • 主な添付書類
  • 申立費用
  • 申述書の提出

 

申立権者

相続放棄ができるのは被相続人の相続人です。

なお、相続放棄は、法律行為のため、単独で相続放棄をするには、成人していなければなりません

もし、相続人が、未成年である場合には、基本的に親権者や後見人が代理して行うことになります。

また、成人であっても認知症などで、意思能力が欠けている場合には、家庭裁判所において成年後見人を選任してもらう必要があります。

主な添付書類

相続放棄の手続きに主に必要な添付書類の概要は以下の通りです(細かい部分は省略しています。)。重複するものは1通で大丈夫です。

■共通書類

  • 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • 相続放棄をする相続人(以下、「申述人」といいます。)の戸籍謄本

①申述人が被相続人の配偶者・子の場合

・被相続人の死亡の旨の記載のある戸籍謄本

②申述人が被相続人の父母・祖父母等の直系尊属に当たる場合

・被相続人の出生から死亡までの記録がある全ての戸籍謄本

・被相続人に死亡した子がいる場合は、その子の出生から死亡までの記録がある全ての戸 籍謄本

③申述人が被相続人の兄弟姉妹の場合

・被相続人の出生から死亡までの記録がある全ての戸籍謄本

・被相続人の直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本

申立費用

相続放棄の申述にかかる費用は、申述人一人につき、収入印紙800円です。このほか、各裁判所で定めている裁判所との連絡用の切手を用意しなければなりません。

申述書の提出

上記の相続放棄に必要な添付書類をそろえ、申述書を作成し、申立費用等の準備ができたら、管轄の家庭裁判所に提出します。

直接、家庭裁判所に行って提出しても、郵送でもどちらでも大丈夫です。前述の3か月の期限ぎりぎりの場合は、直接持ち込んだ方が安全かもしれません。

相続放棄の注意点

相続放棄には、やってはいけないこと、守らなければならないことがいくつかあります。

1.被相続人の財産処分

被相続人の財産を処分(典型例として相続財産を売る、使う、など)してはいけません。

ただし、被相続人名義の財産を処分した場合であっても、一定の範囲内で利用用途が被相続人の葬儀や埋葬に関するものであれば、相続放棄が認められる可能性があります。

しかし、これはあくまでも被相続人に相応の葬儀の場合ですから、不相応に、葬儀を盛大に開き、多額の費用を使った場合には相続放棄が認められない恐れもあります。

 このほかにも、被相続人が介護施設や病院に入院していた時の費用について、遺産から支払ってしまうと相続したとみなされ相続放棄が認められないケースもあります。

また、これと関連して、相続放棄をした場合であっても、入院時や介護施設の入所の際に、これら費用の支払いについて保証人になっているような場合には、相続放棄とは関係なく保証人として支払いが必要になることもあります。

2.相続の開始を知った時から3か月以内に行う

相続の開始を知った時から3か月以内にしなければなりません

 先ほども延べましたが、相続放棄をするためには、期限(相続を知った日から3か月以内)を守る必要があります。

3か月の期限のスタートラインについては、「被相続人が死亡したとき」に限られず、「相続の開始を知ったとき」と幅がありますので、どこがスタートラインなのかは注意が必要です。

また、3か月の期限内であれば、期限の延長を家庭裁判所に求めることもできます。

3.相続放棄をしたからといって、その後何をしていいわけではない

相続放棄をしたからといって、後は何をしてもいいわけではありません。

相続放棄をした場合でも、相続財産を隠していたり、処分したりすれば、せっかくの相続放棄が台無しになってしまいます。

例えば、被相続人の負債を相続するのが嫌で、相続放棄したが、その後に被相続人の預金の解約をして自分のものにするというような行為です。

このような場合は、相続放棄が認められませんから、相続人として、負債の支払いをするしかなくなるでしょう。

相続放棄の効果

 相続放棄をすると、被相続人が死亡したときから、相続人ではなかったことになります。

死亡したときから相続人ではないので、被相続人の抱えていたマイナス財産(借金や様々な未払いの費用、滞納税金など)があっても相続されず、これらから解放されることになります。

反面、プラス財産(不動産、預貯金、株式など有価証券)があっても、相続人ではありませんから、全てもらうことができなくなります。

 

この記事を監修した司法書士は…

【事務所】司法書士 はたけやま法務事務所
【司法書士】畠山 勇輔
【所属】埼玉司法書士会所属

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