この記事でわかること
・自筆証書遺言の残し方
・公正証書遺言の残し方
・秘密証書遺言の残し方
・特別方式遺言について
遺言書には、大きく分けて3つの種類があり、以下のように分けられます。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
具体的にどのような方法で残すことが出来るのか確認しましょう。また、上記3つのような遺言書の残し方を普通方式遺言と言います。他方で、緊急時等に利用できる特別方式遺言という方法もありますので、こちらも併せて解説していきたいと思います。
自筆証書遺言について
自筆証書遺言とは、遺言者自身が遺言内容・日付・氏名を自筆し、押印する遺言書のことです。なお、自身の財産を記す財産目録については、PCやワープロで作成することが可能です。
自筆証書遺言のメリットとしてあげられるのは、おもに以下の3つになります。
- お金がかからない
- 手軽にかける
- 手数料を支払えば、法務局で管理してもらえる
お金がかからない
自筆証書遺言のメリットは、お金がかからないことです。後述する公正証書は、残す財産や契約によって万単位、数十万単位の手数料を支払わなければならなくなります。一方、自筆証書遺言でかかる費用と言えば、ペンと用紙代くらいです。
費用が少なく済むという点は、とても魅力的ですよね。
手軽にかける
自筆証書遺言のメリットとして、手続きが自分だけで完結することが出来るので、誰かの都合と合わせなくても良く、手軽に書けることが挙げられます。
また用紙に関して特に指定がありませんし、ペンも鉛筆やシャーペンといった簡単に消せるものでなければ、指定はありません。
ひとつ注意していただきたいのは、ボールペンでもフリクションは、時間経過や熱によって記載事項が消えてしまう恐れがありますので、使用しないでいただければと思います。
手数料を支払えば、法務局で管理してもらえる
自筆証書遺言は、3,900円の手数料を支払うことで、法務局で管理してもらうことが出来ます。この制度は、2020年7月10日から施行された、比較的新しいものです。
従来まで、自筆証書遺言は、遺言者本人で管理をしなければならず、紛失や改ざんといったトラブルが考えられました。
更に、遺言者の死後、家庭裁判所に検認と言う手続きを経なければならず、遺言者にとっても、遺言者の相続人にとってもやや手間がかかるものでした。
しかしながら、自筆証書遺言の法務局保管制度が施行されたことによって、紛失や改ざんのリスクはもちろん、保管されたものに関しては、検認の手続きを経なくても良くなったのです。
自筆証書遺言のデメリットは、書き方次第で法的効力が発生しない可能性があること
メリットが多いように見える自筆証書遺言ですが、残念ながら大きなデメリットがあります。それは、書き方を誤ると法的効力が無効になることです。
法的効力が失われる可能性がある遺言書とは、おもに以下のような事柄になります。
- 遺言書に日付や署名、押印が無い
- 財産指定があいまいなとき
- 法的拘束力のない事項が記載されている
自筆証書遺言を利用する多くの方が、法律知識に詳しくありません。そのため、遺言書の効力が発揮されない内容を記載してしまったり、記載ミス等で無効になってしまうケースが、まま起こりえるのです。
公正証書遺言について
公正証書遺言とは、公証役場というところで、公証人という法知識に造詣が深い人と相談して、作成する遺言書のことを指します。
公正証書のメリットは、法知識をもったひとと相談して遺言内容を作成するため、法的効力が失われる可能性が低いという点でしょう。遺言書の法的効力があるということは、何よりの強みです。
一方で、デメリットもあり、おもに以下のようなものがあります。
- 費用が高い
- 遺言者本人でないと作成ができない
費用が高い
自筆証書遺言の項目でも少し触れましたが、公正証書遺言作成の費用は高めです。遺言書ひとつあたりに手数料が発生するのではなく、1契約ごとに手数料が発生するからです。
また、手数料は指定する財産によって大きく違います。詳細につきましては、日本公証人連合会が公表している手数料にてご確認ください。
遺言者本人でないと作成ができない
公正証書というと、弁護士などの専門家が、本人の代理人として作成してくれるイメージがあるかもしれませんが、公正証書遺言は代理人が認められていません。
公正証書遺言は遺産相続において、とても強い効力を持つことになるので本人以外は作成できないのです。
なお、遺言者が病気などで公証役場へ行けない時には、公証人が出張することも可能ですが、別途で手数料が発生します。
秘密証書遺言について
秘密証書遺言とは、内容を誰にも知られることなく遺言を残せる方法で、自分で作成した遺言書を公証役場で認証してもらう必要があります。
メリットとしては、作成方法が形式を問わないという点でしょうか。遺言内容を自筆してもかまいませんし、PCで作成しても構いません。
自分で作成した秘密証書遺言を持って、公証役場に赴くわけですが、公証人は「秘密証書遺言を作成した」という事実を認証するだけで、遺言書の内容は確認しません。そのため、遺言内容が無効であることもあるのです。
また、自筆証書遺言や公正証書遺言は法務局や公証役場で保管してもらえますが、秘密証書遺言は、現状遺言者本人で保管するほかありません。
本当に秘密にしたいことがないかぎり、あまりおすすめできない遺言書かもしれません。
特別方式遺言について
特別方式遺言とは、平たく言うと普通遺言方式を作成できない場合に利用する遺言書の作成方法のことを指します。特別方式遺言はおもに緊急時に利用するもので、4つの作成方法があり、以下の通りになります。
- 一般危急時遺言
- 難船危急時遺言
- 一般隔絶地遺言
- 船舶隔絶地遺言
聞きなれないものばかりかと思いますので、それぞれ簡単に説明させていただきます。
一般危急時遺言
病や大けがを負って、命の危機に瀕している方が利用できる遺言書になります。一般危急時遺言は、遺言者と利害関係のない3人の証人の立ち合いの元、作成することとなります。
なお、遺言者が遺言書を書ける状態でない場合、証人に遺言したいことを口頭で伝えて、書き取って貰うこともできます。遺言内容に誤りが無いか、遺言者本人、また他の証人に確認してもらい、すべての証人に署名と押印をしてもらえれば、遺言書の効力を持つことが出来ます。
なお一般危急時遺言は、作成してから20日以内に家庭裁判所へ確認の手続きを申し立てないと、無効になりますのでご注意ください。
難船危急時遺言
船や飛行機などに乗車し、何らかの理由で死亡の危険がある方が作成できる遺言書になります。遺言書の作成には遺言者と利害関係のない2人以上の証人が必要です。
遺言書は自筆ではなく、証人の代筆や、証人に遺言したいことを口頭で伝えて、書き取って貰うことも可能です。
遺言書を書き終えたら、一般危急時遺言と同様、遺言者、証人全員が内容を確認のうえ、誤りが無い場合は署名と押印すれば、遺言書としての効力を持つことが可能です。
完成した遺言書は、家庭裁判所の確認の手続きを経る必要がありますが、遭難や難破といった場合、いつ手続きをとることが出来るのかわからないので、手続き期限はありません。
一般隔絶地遺言
一般隔絶地遺言とは、伝染病等が理由で、一般社会から隔絶された土地にいる方が利用できる遺言書方式です。伝染病以外では、刑務所に服役をしていたり、災害によって隔絶された方も含みます。
遺言書は、遺言者本人が記載する必要があり、警察官1人、他1人以上の証人の立ち合いが必要です。遺言書を書き終えたら、立会人すべての署名と押印してもらえれば、遺言書が完成します。
船舶隔絶地遺言
船舶隔絶地遺言は、長期の航海をおこなう方が利用できる遺言書です。なお、飛行機の乗員は対象外で、利用することはできません。船長、または事務員1人、および証人2人以上が立会いの下、遺言者本人が遺言書を作成します。
遺言書が作成出来たら、遺言者と立会人全員の署名・押印をしてもらうことで、法的効力を持つことが出来ます。
まとめ
今回は、遺言書の種類を解説していきました。相続を考えているかたは、おそらく普通遺言方式を利用すると思いますが、火急の状態に陥っていた場合、特別な遺言書の残し方もあるということを覚えていただければ幸いです。
この記事を監修した司法書士は…
【司法書士】近藤 文義
【所属】千葉県司法書士会
【一言】
弊所では、行政書士・社労士・FP等複数の資格を保持者がおり、ご依頼者様のお悩みにワンストップで対応しております。まずは、お気軽にご相談ください。